狙われる恐怖

それぞれ、お国の事情というのは大分異なります。
特に、軍事関係は日本にいると考えられない状況です。
そして、戦争をしている国の国境は非常に危険。
初めて国境を意識した時の話をひとつ。

初めてタイに行ったときの話です。
20歳そこそこの頃でした。
当時、タイとラオスは国境紛争をしており、ノンカイの渡し舟も中断されていました。

その時は大学の友人と旅してまして、チェンマイから一緒に北上しました。たどり着いたのは、メコン川のほとりのチェンセンという村でした。特に何もないこの村に特に何の目的もなく行きました。
ついたその日の夜、何もすることがないので友人と夜のメコン川を散策することにしました。河辺は砂地になっており、当然のように何もありません。対岸も暗闇。月明かりだけが頼りの暗闇です。
「河の向こうがラオスなんだねぇ。」
当たり前のことをいいながら対岸に目をやりました。そして煙草に火をつけ、もう一度目をやると、先ほどまで何の明かりもなかった場所がちかちか光っています。面白いので、こちらもライターの火を点けたり消したりすると、その光もそれに反応しています。
「なんだ、あれ?」
友人と笑いながら遊んでいると、その光が近づいているのがわかりました。

「・・・やばくない?」
「・・・うん。」

ちょっと焦りかけたその時、
「何してる!!」
突然顔に強力なスポットライト級の光があてられました。
「俺達はマリンポリスだ。」
自動小銃を持った10名ほどの屈強なタイ人が、周りを囲みます。
「メコン川のほとりでなんでマリンなのか」
などという、細かい突っ込みを入れられるような状況ではありません。必死に説明します。
「日本人の旅行者でそこのゲストハウスに泊ってるんだ。」
たどたどしいタイ語と英語で答えます。
「そうか。」
リーダー格のおやじが尋問します。
「パスポートはあるか?」
「ゲストハウスにおいてある。」
「ならいい。」
と、突然、
「ラオスに行きたいか?」
と聞かれました。私は、
「行けたら行きたい。」
と答えると、おやじの目が光ります
「でも、行けないからいいや。」
慌てて付け加えます。そんな話を10分くらいすると、容疑が晴れたらしく、
「気をつけろよ。」
おやじは一言残して見回りに行きました。
「恐かったな。」
「ああ・・・。」
友人と恐怖を分かち合います。
「帰るか?」
「すぐ帰るのはしゃくだから、一服して行こう。」
「それがいい。」
煙草に火をつけて大きく吸い込みます。対岸の光は、この騒ぎに感ずいたのでしょう。暗闇に戻っています。
「じゃ、戻ろうか。」
「ああ。」
煙草の火を消し、後ろを振り向きました。と、その瞬間、
「!!」
二人は息を呑みこみました。
われわれの背後には、ノクトビジョン付きライフルを抱えたマリンポリスが2人、草に隠れて座っていたのでした。

当時の私。20歳。

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