私にトラウマを作った男

今回はちょっと恐かった話をしたいと思います。
恐かったといっても別に心霊現象ではありません。
ただ、私が特定の人種に対してトラウマを持ってしまっただけのことです。

タイの南の村に行ったときのことです。
私はタルタオ島に行くために、港のある村に行きました。その村は小さく、観光客の泊るホテルはもちろん、ゲストハウスもなく、旅社(いわゆる置き屋)が1件しかありませんでした。
旅社とは、本来宿泊するためのものではなく、男が一人で行って1〜2時間(個人差による)しか使用されることのない場所です。
しかし、ほかに宿泊施設のない以上、仕方ありません。一応お泊り機能もありますから、そこに一泊することとしました。

荷物を置いて、すぐとなりにある食堂に行こうとすると、ずらっと女性が仕事を待ちながら雑談していました。
「いいカモがきた。」
と思われたのでしょう。話し掛けられます。
「どこから来たの?」
「何歳?」
日本人が珍しいのでしょうか、ただ暇なだけなのでしょうか、日本人であることがわかると質問が始まります。
「ねえねえ、私の胸大きいでしょう?」
「私の肌、さわってみてよ。」
同時に自己紹介が商売モードで始まります。
しかし、私は長距離バスに揺られて疲れていました。そんな気になりません。
「疲れてるから今日は役立たずだよ。」
そんなふうに軽くかわしました。

彼女らと10分ほど話をすると
「どうやらこいつは買う気がないらしい。」
ということがわかってもらえたようで、すんなり開放されました。
しかし、それが後々とんでもない事態を引き起こすことになろうとは夢にも思いませんでした。

やっとのことで食堂にたどり着くと「港だから」ということでちょっと(その当時にしてみれば)豪勢な夕食をとりました。そこにほとんど客はなく、店員の女の子も暇、コックも暇ということで、二人が入れ替わり立ち代わり話をしに来ました。そこには多分3時間くらい入た気がします。閉店時間の10時に宿に戻りました。
宿の女性軍は商売に入ったのか、それとも眠ったのか、一人もいません。私は、部屋に戻り、シャワーを浴びて眠りました。

「おーい、あけてくれ。」
夜の1時ごろです。ドアをノックする音はうるさくて気になりますが、眠いのと恐いのとでほっておくこととしました。が、30分経っても止まりません。意を決し、ドアに向かいます。
「誰?」
「俺だよ、コックの・・・。」
「何?」
「ちょっと開けてくれ。」
恐らく物取りではないだろう。そうは思いましたが念のため、財布とパスポートをベッドの下に隠し、ドアを開けます。
「悪い、こんな夜中に。」
彼は自分に兄貴がいることと、その兄貴とうまくいかないこと、そしてその兄貴が今日家に帰ってきたことで家にいられないことを説明し、今日ここで眠りたいと言ってきました。
「とりあえず、命の心配はない。貴重品もかくしてある。それ以上に眠い。」
そう判断した私は、すごく眠たかったのです。

かれはベッドの隅の方に転がりました。ここのベッドは大きく(セミダブ以上)、男2人が寝ても余裕があります。念のため、電気をつけたまま私はその反対側に横になりました。
すると彼が突然寝返りを打ちました。そして、私は何が起きたのか一瞬わかりませんでした。ちょっと気持ちいいような錯覚もありましたが、すぐ正気に戻りました。
まったく予想しなかった出来事でした。あろうことか、彼は私の股間に手をやり(幸か不幸かジーンズでした)、やさしく手を動かしていたのです。

*+¥&−#$!!!!

言葉ではなく、今まで発したことのない音を出して私は立ち上がりました。

「何するんだ、ばか野郎っ!!」
出てきたのは日本語でした。タイ語を話す余裕はありません。
「えっ?」
彼は不思議そうな顔をしています。

「女嫌いな日本人だって聞いたけど・・・。」


彼は涼しい顔をしてそう言いました・・・。

その村にて。左はドイツ人のケニー。面白い奴でした。

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